Community Design Research : Document Reports

*CEL(大阪ガス エネルギー・文化研究所) HPより引用

「コミュニティ・デザイン論研究」2017年度レクチャー・ドキュメント

同志社大学大学院総合政策科学研究科とCEL(大阪ガス エネルギー・文化研究所)は、教育研究協力協定の一環で同研究科科目「コミュニティ・デザイン論研究」を連携して開設しています。

加速する地域の多文化化、深刻化する次世代の格差の拡大と固定化、直面する地域再編の波、横断的な学びによる地域再生への試行など、激変する社会と切り結ぶ、コミュニティ・デザインの最前線で直面する課題を、文理を横断する多分野の研究・実践から捉え、解決への知を引き出し共有するための講座として企画・運営しているもので、12名の実践者・研究者が授業を担当しています。

このたび、2017年度に行われた授業を再構成して、12本のレクチャー・ドキュメントにまとめCELホームページにて公開いたしました。

新着情報欄からご覧いただけます。
http://www.og-cel.jp/index.html

人口減少とともに災害が多発する列島にあって、改めて地域の持続可能性やレジリエンスとは何かが強く問われています。コミュニティ・デザインをめぐる多分野の知とネットワークが、多地域での実践・研究につながり活かされていくことを願っています。

Recent Articles

○前田昌弘:再定住社会のデザインにむけた住宅・地域計画の研究と実践,2018年度日本建築学会大会(東北)建築計画部門研究懇談会「建築・都市・農村計画研究のカッティングエッジ―若手研究者は研究テーマといかに出会い、発展させてきたか―」資料集,pp.2-6,2018年9月

○座談会 六つの格差から見る建築計画と住宅行政のゆくえ,建築雑誌, 特集 日本のすまいと六つの格差,pp.23-25,日本建築学会,2018年8月

○前田昌弘『地蔵盆の再評価とまちづくり』日本建築士会連合会会誌「建築士」オピニオン、Vol.67, No.789, 2018年6月

○前田昌弘『有隣学区での空き家活用の取り組み』日本建築士会連合会会誌「建築士」オピニオン、Vol.67, No.788, 2018年5

○前田昌弘『社会関係の結び目としての住まいを解くー京都での空き家活用の取り組み』財団法人 第一生命財団機関誌「コミュニティ」第160号、2018年5月

○前田昌弘『再定住社会のデザインにむけて』日本建築士会連合会会誌「建築士」オピニオン、Vol.67, No.787, 2018年4月

Guidebook for Revitalizing Vacant Houses(2018)

有隣学区まちづくり委員会空き家チーム「その空き家、放置していませんか?ー 有隣学区の空き家活用 ー」,2018年3月

住まいのお悩み、地域で解決しませんか?
◇学区では、空き家活用を進めています。
2002年度に発足した「有隣学区まちづくり委員会」は、有隣学区自治連合会や地域の住民の方々と連携し、2014年度から「空き家」を解消すべき問題としてだけではなく、地域資源として活かすための活動(京都市の地域連携型空き家対策促進事業を活用)を進めてきました。
専門家が、空き家活用を支援します。
有隣学区の空き家活用は、有隣学区まちづくり委員会のメンバー4名からなる「空き家チーム」が主導。有志の建築士や大学研究者も参画し、建物の改修プランや補助金の活用といった具体的な提案を行い、実施しています。

Envisioning Urban Future (2018)

「特集 都市の未来を構想できるか? Envisioning Urban Future」日本建築学会 建築雑誌, 2018年3月

21世紀は都市の時代と言われる。人類の7割近くが都市で生活するようになるとの予測もある(World Urbanization Prospects, United Nations, 2014)。
しかし、現代都市は、人類の生(Life)の器として、十分な性能を有しているのだろうか? 例えば、日本の大都市では出生率が軒並み低下している。確かに、職住を分離し郊外化を進めてきたことで、通勤時間が増大した大都市では、女性の社会進出に伴い、ワークライフバランスを保ちつつ子どもを産み育てることは、困難かもしれない。また、保育施設の整備が不十分など、変化する社会状況に対応した子育て環境が確保されていない、ということもあるだろう。では、女性の社会進出に対応した保育環境の整った、また、職住近接したゆとりある生活を送れる都市をつくることで、出生率低下の問題は解決できるだろうか?
海外のリバビリティが高いとされる都市においても、また日本において比較的住みやすいと言われる都市においても、出生率は低い場合が多い。このことは、近代都市計画が対象としてきた都市の構造や物理的環境とそれらが人間活動に与える影響(例えば、住宅の広さや通勤時間、十分に環境の確保された施設整備やそこへの近接性の確保など)を操作することだけでは、出生率は回復しないことを暗に示している。むしろ、都市に装備されているソフトウエア、都市社会のシステムやそこで暮らす人々に共有されてゆく価値そのものが、生物としての「ヒト」には、マッチしていない。そのことが、出生率の低下の根幹的な理由ではないだろうか。
また、都市は、人が死にゆくという点においても、極めて脆弱な仕組みしか用意していない。孤独死や自殺が多発する状況は、極めて都市的な状況と言えるかもしれず、現代都市の問題を表象している現象のひとつだろう。

Reviewing 3.11 after 6.5 years from architectural planning and community design(2017)

前田昌弘「東日本大震災から6年半 連載を振り返って —建築計画・コミュニティの視点から」日本建築学会 建築雑誌, 2017年11月
当連載「震災復興の転換点」(担当=中島伸、前田昌弘、小泉秀樹)を開始した2016年1月時点で東日本大震災からすでに5年近くが経過し、現在に至るまで被災地はそれぞれの方法で復興へと向かっている(あるいは、いまだに復興に向かえない困難を抱えている)。そのような状況を踏まえ当連載では、復興に向けた取組みに生じつつある“個別性”に着目した。そして、それぞれの復興プロセスになんらかの“転換点”があったとすれば、それはどのようなものであったか、ということをテーマとして掲げた。
ここで言う“点”は地域に決定的な変質をもたらす“特異点”かもしれないし、あるいは、幾つかの“通過点”のひとつかもしれない。それは現時点ではわからない。復興は息の長い取組みなので、厳密な評価には少なくとも10〜 20年といった時間が必要である。とはいえ、東日本大震災は、わが国の社会構造の転換期(人口減少、高齢化など)に発生した大災害であり、復興においても社会組織のレジリエントな再編成が強く求められている。したがって、それぞれの取組みを“点”としてだけとらえるのではなく、どのような“線”が将来にわたって描きうるのか、“走りながら”でも問い続ける努力は決して無駄ではない。そういった、現場ごとのタイムラインについて、現場の人たちが敏感に察知し、また、同時代を生きるできるだけ多くの人々が共有・共感することが重要ではないだろうか。
このような問題意識を必ずしも十分に共有できていたわけではないが、当連載では2016年1月号からさまざまな分野、立場(研究、実務)の専門家から興味深いルポルタージュをご寄稿いただき、2年間の連載企画を終えようとしている。本稿では、建築計画、コミュニティの視点から連載を振り返り、幾つかの論点と今後の検討課題について考えてみたい。

Architectural Design for Regenerating Tea Plantation Communities(2016)

前田昌弘 他「未来を開くきっかけとしての建築 -スリランカ旧紅茶農園長屋再生プロジェクト」地域開発, 第613号, 2016年

紅茶は17 世紀頃からヨーロッパで愛飲されるようになり、東西の交易や文化交流において重要な役割を果たしてきた。スリランカ産の紅茶もその一端を担い、世界史の中で重要な位置を占めてきた。「スリランカ」と聞いてもどんな国かピンと来ない人も、「セイロンティー」の産地と言えば、少しイメージが湧いてくるのではなかろうか。ところが、スリランカの紅茶産業をどんな人々が支えてきたのかということについては、少なくとも日本ではほとんど知られていないように思う。  本稿で紹介するプロジェクトに携わるまではわたしたちも同じような認識であったが、半ば偶然にもスリランカの紅茶産業を陰で支えてきた人々と触れ合う機会を得た。現在、紅茶農園の労働者として19世紀末にインド南部から移住してきたタミルの人々の生活を支えるために、彼らが住み続けてきた築130年以上の長屋の再生に携わっている。スリランカとは縁もゆかりもないわたしたちが現地では”負の遺産”と捉えられている紅茶農園に住む人々の支援にどのような形で関われるのか、時には戸惑いを感じながらも試行錯誤を続けている。  ここでは、現在進行形の取り組みを通じて、建築と時間、あるいは建築と支援といった観点から、“未来を開くきっかけ”としての建築の可能性について考えてみたい。

Geography of Contemporary Disaster Restoration(2017)

「特集 現代復興の地理学 Geography of Contemporary Disaster Restoration」日本建築学会 建築雑誌, 2017年3月

東日本大震災から約6年という時間の経過のなかで、被災地がいよいよ本格的に復興に向かっている段階(もしくはいまだに向かうことができない困難な段階)にある。そのような状況のなかで2016年4月には熊本地震が発生して甚大な被害がもたらされ、災害と向き合い続ける日本列島ということを私たちは再認識させられている。熊本地震では、東北や全国からの支援者が現地入りし、復旧・復興にかかるノウハウが現場に伝達されていると聞く。考えてみるとわが国では、こうした行政、企業、専門家、市民によるネットワークが復興のたびに技術伝播を伴って形成されてきた。そして、各地での災害リスクや被災状況などその土地に根差した復興が行われる。これは阪神・淡路大震災をひとつの契機とした時空間を超えた「復興ネットワーク」とも呼べるものであり、ここには「現代復興の地理学」とでも呼べる地図があるに違いない。今号では、いまだ道半ばにある東日本大震災からの復興を軸に、前後の復興とのつながりから相対的に未来を描きたい。

Community Design toward Resettlement of Victims in the Nuclear Disasters(2016)

前田昌弘「原子力災害被災者の再定住とコミュニティ・デザイン」日本建築学会 建築雑誌, 2017年11月

東日本大震災の発生から5年が経過しようとしている。被災地の復興に向けた取り組みの成果が一部ではみえつつあるが、他方で、未だに多くの人々が各地で避難生活を送っている。原子力災害を引き起こした福島第一原発事故の影響は大きく、福島から県内外への避難者は約103,139人にのぼる(2015年11月27日現在、復興庁公表)。放射性物質の人体への影響はみえづらく、また、事故の収束の目処も未だ不透明である。そのため、原子力災害からの再生には多くの不確実性が伴っている。そのような状況下で避難者は、再定住(住みなれた環境から別の安定状態へと移行すること)の見通しを立てることさえ困難であり、多くの不安と葛藤を抱えている。
筆者らの研究室では、福島県から関西方面に避難して来た人々を対象として、避難者の居住実態と住情報支援の方策について発災直後から調査・研究を行ってきた。避難先での支援は現在も大きな課題であるが、一方で、避難元である福島県では原子力災害からの再生に向けて災害公営住宅の供給や原発周辺自治体の復興計画など、新たな取り組みも始まっており、復興は一つの転換点を迎えている。本稿では、転換期において先導的であると思われる取り組みとして、福島県居住支援協議会、および富岡町災害復興計画(第二次)検討委員会の取り組みについて報告し、福島のこれまでと今後について住まいと地域の再生という観点から考えてみたい。

Case Book of Jizou-Bon Community Activities (2015)

 

前田昌弘「レジリエントな地域コミュニティづくりにむけた 地蔵盆× まちづくりに関する研究・活動」,京都大学高田研究室,2015

私たちを取り巻く現代の社会は常に、災害や開発といった不確実な変化や危機に晒されています。京都の長い歴史の中で様々な変化や危機を乗り越えて受け継がれてきたお地蔵さまと地蔵盆には、私たちや地域のコミュニティが備えておくべき“レジリエンス”(不確実な変化や危機に対処する“柳の木の枝” のような“しなやかな強さ”)を備えていると思われます。そこで私たち京都大学髙田研究室では、この“レジリエンス” という観点から、地蔵盆が地域のまちづくりに果たす役割について調査・研究を行っています。

*地蔵盆は、地蔵菩薩の縁日かつお盆(8 月24 日)を中心として行われる行事である。地蔵信仰という宗教的な性格を持ちながらも,町内安全や子どもの健康を願い,時代とともに変化しながら受け継がれてきた。地蔵盆は、京都のまちなかでは町内(両側町)ごとに住民によって運営され、コミュニティの維持に重要な役割を果たしてきた。